一票の格差とは何か?日本の選挙問題について
選挙がおこなわれた後のニュースなどで、〇〇倍の格差があると聞いたことがある人も多いでしょう。
これには国政選挙において一票の価値に格差があるという意味ですが、このようなことが起きていると政治が一方に傾いてしまいますし、不平等さを感じてしまいます。なぜこのようなことが起きるのでしょう。ここでは日本における一票の格差について解説と違憲問題について触れていきます。
一票の格差とは
民主主義の原則は1人に一票で、その価値は同等であるべきであるとされています。しかし、選挙区間で人口(有権者)の数が違っているので、選挙の一票の価値が異なっていることを指す言葉です。TVニュースや新聞では一票の格差と報道されるのですが、裁判所での判決や国で発表されている資料などでは投票価値の較差という言い方をします。ここでは格差を度合を示す倍率を出す計算方法や問題点、原因、解決策などについて触れていきます。
格差の計算
ニュースで「今回の選挙では〇区と×区の最大で~倍の格差があります」と流れます。
計算式は有権者÷議員定数=議員1人当たりの有権者数で表すことができ、これを選挙区で比較しているということです。例えば〇区と×区で当選する人が1人とします。〇区は有権者100人、×区が50人とすると、×区の方が〇区に比べて、一票の重みが2倍になっています。
問題点
一票の格差がある状態だと民意が正確に反映されなくなってしまうという問題があります。
有権者の多い地区では1人当たりの価値が小さく、有権者の少ないと価値が大きくなるために人口比が比較的低い地方の方が巨大な政治的発言力をもってしまいます。これでは日本の中で一部の人のみが得をしてしまう政治の構造であることが問題になっています。
また議員や政党の利害が絡むので、調整が必ずしも容易でないことも問題のひとつです。
原因
原因の一端としては1994年に導入した小選挙区制の「一人別枠方式」であるといわれています。これは衆議院の小選挙区300議席のうち、47都道府県に1議席ずつを別枠として割り当て、残りの議席を人口比に合わせて配分する方式です。人口が少ない地方に多く議席を配分することで、地方の民意も国政に反映させる目的で規定されたものですが、一票の格差が生まれてしまった原因となってしまいました。
解決策
人口変動に合わせて議員定数を再配分することや、選挙区の区割りを変えていかない限り一票の格差が生じてきてしまいます。ちなみに、衆議院では選挙区の区割りを人口を基準にして、アダムズ方式という方法で是正を行っています。
ちなみにこの一票の格差を減らすために選挙区毎の議員定数を振り分けたり、区割りの方法を変更していくことを定数是正といいます。
そして解決策としては、この定数是正がシンプルな方法です。ただ調整が難しいのに加え、利権問題もありなかなか動きがありません。私たちが直近でできることとしては国民審査というものがあります。これは最高裁判所の裁判官の審査をするというものです。これにより裁判官が一票の格差がある状態で行われる選挙は違憲で無効であると見せることで定数是正を適切にしてもらおうという狙いがあります。
違憲
一票の格差が最大で2倍を超えた2012年、2014年の衆院選で、最高裁は違憲状態と判断し、是正を求めました。
2017年の衆院選においては一票の格差が最大で1.98倍で、2つの弁護士グループが選挙区において投票価値が違うのは憲法違反だと無効を求めました。しかし、最高裁は合憲とする判断を示し、上告を退けました。
そもそも何故、憲法違反だと言われているのでしょうか。ここでは、一票の格差が違憲問題といわれている理由と、それに対する裁判所の判断に触れていきます。
法の下の平等
憲法14条では”法の下の平等”という記述があります。そこには「すべての国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的または社会的関係において差別されない。華族その他の貴族の制度は、これを認めない。」とあります。すなわち選挙における国民一人ひとり(有権者)の一票の価値、重さにおいても平等にしましょうという条文です。一票の格差によって価値が平等ではないから違憲であるというわけです。
裁判所の判断
裁判所の多くの判決は違憲状態となっています。これは憲法には違反している状態ですが、無効にはしないとなっているということです。価値や重さが等しくなるように国会で話し合わせて違憲(無効)にならない理由は、もし無効にした場合では、格差のある地区だけではなくその時行った選挙がすべて無効となってしまうからです。そうなってしまう極端な話、永遠に無効が続いてしまい無政府状態が続いてしまうので、国の運営ができなくなってしまうのです。
まとめ
これまで一票の格差についての問題点や原因、解決策と違憲問題について触れてきました。現状の日本では、なかなか格差を是正するのは、すぐには難しいでしょう。なので国民一人ひとりが民意をしっかり反映させるためにも政治に参加していく必要があります。触れてきた問題について、日本以外の国での一票の格差、区割りのやり方や違憲裁判の判決や憲法について調べてみるとより政治に興味が持てるでしょう。ここまで書いたことで皆さんに政治に興味を持ってもらうきっかけになれば幸いです。